| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-226  (Poster presentation)

大気環境DNAを用いた哺乳類および鳥類の検出に関する基礎的検討
Preliminary study for the detection of mammals and birds using the airborne environmental DNA

*中尾遼平, 稲葉愛美, 赤松良久(山口大院・創成)
*Ryohei NAKAO, Manami INABA, Yoshihisa AKAMATSU(Yamaguchi Univ.)

環境中に存在する生物由来のDNAを検出する環境DNA分析は、生物モニタリングのツールとして、水を主な環境媒体として利用している。水以外の環境媒体として大気があげられるが、大気中に含まれる環境DNAの検出に関する知見は、水環境DNAに比べて圧倒的に不足しているのが現状である。そこで本研究では、大気環境DNAサンプリング手法に関する基礎的知見の集積を目的として、2種類のサンプラーを用いた哺乳類および鳥類の環境DNA検出を試みた。山口県宇部市内のときわ動物園にてサイクロン式とフィルター式のエアーサンプラーを設置し、それぞれ4時間の空気サンプリングを実施した。その後それぞれの溶出液を用いてサンプラーから環境DNAを回収し、さらに、フィルター式では、溶出後に残ったフィルターからも種の検出を試みた。DNA抽出ののち環境DNAメタバーコーディングによって哺乳類および鳥類の種を網羅的に推定した。解析の結果、サイクロン式では平均3.8種、フィルター式では2.8種であった。また、フィルター式では溶出後のフィルターでは、平均9.8種であった。また、もっとも種数の多かったフィルター式(フィルター)のサンプルは、このサンプルでのみ検出された種が多数含まれていた。そのため、サイクロン式に比べて、フィルター式のほうが大気環境DNAをより効率的に捕集できており、水中と同様に大気環境DNAもフィルターから直接抽出することで種の取りこぼしを減らせることが示された。また、フィルター式を用いてサンプリング時間を変化させた場合、サンプリング時間が長いほど検出種数が増加することが示唆された 。ただし、サンプル間で検出される種数や種組成のバラつきが大きかったことから、今後は調査日の天候や風向きなどの環境要因との関係についても検討していく必要があると考えられる。


日本生態学会