| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-227 (Poster presentation)
河川と海が出会う「河口」は生物多様性が高いことで知られている.海の河口は汽水域という特異な環境であり,独自の生態系を成していることから多くの研究が行われてきたが,湖の河口については研究が少ない.本研究では,北海道の屈斜路湖の6つの流入河川河口と沿岸に生息する魚類と餌生物を調査し,湖における河口の重要性について調査を行った.調査は2019年から2021年にかけて行った.各調査河川で河口から30 m上流までを調査範囲とし,地形調査,魚類調査,餌生物採集,環境要因を測定した.各河川の環境要因を主成分分析にかけたところ,オンネシレト川とオンネナイ川は底質が粗く,アメマス川,オサッペ川,エントコマップ川は底質が細かいという特徴が見られた.流下昆虫は,川での採集個体数と比較して沿岸の採集個体数は少なかった.水生昆虫と環境要因を比較したところ,トビケラ目が多いクラスターは流速が速く水深の浅い河川環境に出現し,カゲロウ目が多いクラスターは流速が遅く水深の深い湖環境に出現した.カ亜目が多いクラスターは河川と湖の両方の環境に出現した.落下昆虫と環境要因を比較したところ,コウチュウ目が多いクラスターは河川環境に出現し,ハエ亜目,カメムシ目,カ亜目が多いクラスターは河川と湖の両方の環境で出現した.魚類と餌資源の出現する環境を比較した結果,底生魚類と水生昆虫,遊泳性魚類と水生昆虫,遊泳性魚類と落下昆虫でそれぞれ関係が見られなかったことから,餌以外の要因が魚類の生息場所を決定していると考えられる.沿岸と比較して河川や河口に魚類が集中していること,河口沖に魚類が集まっている様子を確認していることから,魚類にとって河口が重要な生息環境であることは明らかである.今後は物理的環境調査や河口沖の調査が必要だと考えられた.