| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-228 (Poster presentation)
植食性昆虫が植物に寄生し、寄生された植物の部位が物理的、化学的に刺激されることで異常発達した構造を「虫えい(虫こぶ、ゴール)」とよぶ。タマバチ科はそのような虫えいを形成する代表的な昆虫のひとつであり、主にコナラ属の木本を寄主とし、その芽や葉、花や実、枝や根に虫えいを形成する。一般的に、虫えいは樹勢または草勢の強い個体や部位に多く形成されると考えられているが(plant vigor hypothesis)、タマバチ科においてこれを検証した事例は限られている。火入れや選択的な伐採によって維持される半自然草原および草原に隣接する林の林縁部では、攪乱によって、萌芽能力の高いコナラ属の個体群が維持されている場合がある。上記の仮説がタマバチ科においても当てはまるのならば、このようなコナラ属の個体群が維持されている半自然草原には潜在的に多様なタマバチ科が生息している可能性が考えられる。そこで、本研究では、本州、四国、九州に見られる半自然草原8地点において、コナラ属の個体群およびタマバチ科による虫えいの分布を調査した。その結果、4地点でコナラ属の分布を確認し、そのすべてでタマバチ科による虫えいを確認した。1地点あたりで確認された虫えいは1種類から12種類におよんだ。これらの結果は、半自然草原がタマバチ科の生息地として利用されている実態を示している。