| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-230  (Poster presentation)

学校の校歌と文化的生態系サービスの関係
The relationships between school songs and cultural ecosystem services

*宮内一輝(東京都立大学)
*Kazuki MIYAUCHI(Tokyo Metropolitan University)

生態系サービスの一つである文化的サービスとは、精神的な質の向上・知的な発達・内省・娯楽・審美的経験等を通して人々が生態系から得る非物質的な便益である。そして、文化的サービスには、その非物質性、不可視性という特徴により様々なメリット・デメリットがある。文化的サービスのデメリットである非物質的な現象の定量の困難さおよび、価値観という不確実性を含む要因の捕捉の困難さに対して、歌の歌詞を検討することが有効である。しかし、広い範囲で歌われる歌は、具体的な生態系、生物多様性との関係は検討できていないという課題がある。この課題を解決できる歌として、校歌が考えられる。そこで本研究は、八王子市内の公立小中学校の校歌の歌詞と、自然に関連する教育プログラムを用いて地域の生態系が供給する文化的サービスの捕捉を試みた。
各学校のホームページから収集した校歌の歌詞の中に含まれる自然に関係するキーワードを、生物名、種名、生態系、ハビタット、動詞、自然現象、地名、山系、水系に分類し、自然に関連する教育プログラムを把握するためにアンケートを実施した。その後、校歌に含まれるキーワードと自然に関連する教育プログラムの関係を見るためにt検定を用いて解析を行った。その結果、各校の自然に関連する教育プログラムについて、生態系、動詞、山系、種名、水系に分類したキーワードについては、いくつか差が検出された。対して校歌に含まれる全キーワード、生物名、ハビタット、自然現象、地名に分類したキーワードそれぞれの数に差は示されなかった。したがって、校歌の歌詞は自然教育プログラムに影響する可能性が示された。しかし、アンケートの改良や、キーワードの分類方法の検討、本研究とは異なる方法を検討することで校歌の持つ文化的サービスをより明瞭に捕捉するといった今後の課題が見つかった。


日本生態学会