| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-250 (Poster presentation)
小笠原諸島に移入した特定外来生物グリーンアノールは地域固有の生態系にとって大きな脅威となっている。フェンスやトラップを利用した防除が行われているが、グリーアノールの生息域拡大を食い止める、より効果的な防除方法が求められている。本研究ではフェンス内へのグリーアノールの侵入を防ぐ方法を提案するため、本種が忌避する音声を流すことでフェンスに登る行動を抑制できるかどうかを検証した。実験アリーナ内にツタ状のフェイクグリーンを巻き付けたフェンスを設置し、アリーナの中心に静置されたグリーアノールが、実験開始後にとる行動を観察した。実験中は、超指向性のスピーカーからフェンスに向けて、忌避候補音声5種類(3500Hzの単音、捕食者であるアカオノリスの鳴き声、エンジン音、破裂音)のうちの1種類を流した。フェンスにおける最大音量は約80dBとなるようにした。また、コントロールとして音声を流さない実験も行った。実験開始後30分が経過した時点で実験終了とし、それまでにフェンスに登ったかどうかを記録した。フェンスに登ったかどうかを目的変数、実験開始時の頭の向き(フェンス側か反対側か)、雌雄、忌避候補音声を固定効果、グリーアノールの個体を変量効果とする一般化線形モデルを作成し、コントロールと各音声条件との比較を行った。その結果、グリーアノールは音声を流さない場合に比べて、アカオノリスの鳴き声、エンジン音、破裂音が流れている場合に有意にフェンスに登らなかった。このことから、野外のフェンスでこれらの音声を流すことによって、本種のフェンスへの登はんを抑制しフェンス内への侵入を防げる可能性が示された。