| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-251  (Poster presentation)

外来種アライグマの導入初期の二地域における頭骨の形態学的特性
Morphological characteristics on skull of raccoon Procyon lotor during earlier invasion stage in two introduced areas of Japan

*加藤卓也(日本獣医生命科学大学), 山﨑文晶(日本獣医生命科学大学), 土井寛大(日本獣医生命科学大学), 川道美枝子(関西野生生物研究所), 羽山伸一(日本獣医生命科学大学)
*Takuya KATO(Nippon Vet. & Life Sci. Univ.), Fumiaki YAMASAKI(Nippon Vet. & Life Sci. Univ.), Kandai DOI(Nippon Vet. & Life Sci. Univ.), Mieko KAWAMICHI(Kansai Wildl. Res. Assoc.), Shin-ichi HAYAMA(Nippon Vet. & Life Sci. Univ.)

特定外来生物アライグマ(Procyon lotor)は全国的に分布が拡大しているが、その繁殖学的特性、食性などの行動生態、そして遺伝的背景については一定の知見が明らかになってきた。他方、本種が自然分布する北米では頭蓋の形態学的特性に関する報告があるが、欧州や日本に導入された集団ではほぼ調べられていない。いくつかの外来種において、導入された地域の集団と在来個体群との間に形態的変異がみられており、この現象の説明として環境適応との関連性が挙げられている。日本における本種の定着から現在までにおいて、形態的変異が生じているかを検討するためには、侵入初期のアライグマにおける遡及的な形態学的特性を明らかにする必要がある。そこで、本研究では過去に二地域で回収した頭蓋検体を対象に、1)遺伝的背景をふまえた二地域間及び在来個体群との形態的差異、2)雌雄における地域や年齢群間での形態的特徴を明らかにすることを目的とした。神奈川県鎌倉市で2005年から2007年に捕獲された143検体、並びに京都府舞鶴市で2009年から2014年に捕獲された63検体の頭骨、ならびに各個体の性別、年齢査定(幼獣、亜成獣、成獣)の記録を利用した。各頭骨は最大頭骨長、基底長、頬骨弓幅など13部位を計測し、性別ごとに主成分分析(PCA)により形態的特徴を検討した。また、主成分を目的変数として地域と年齢群を説明変数とした主成分回帰分析(PCR)を実施した。本研究の結果、両地域の雌雄ともに頭蓋のサイズは、在来個体群の中でも大型の集団と同等であった。第一、第二主成分(PC1、PC2)を用いたPCRの結果、雌ではPC1に対し地域間及び幼獣-成獣間での差が認められ、雄ではPC1に対し全年齢群間で、PC2に対し地域間での差が認められた。既存研究により、頭蓋サイズの性的二型は明らかにされているが、性別により年齢群間との関係が異なることは、本種の雌雄での社会性の違いや繁殖戦略に寄与している可能性が示唆される。


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