| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-254  (Poster presentation)

ヒアリの侵入初期段階での調査するべき範囲の推定
Estimating the optimal areas to monitor in the early stages of invasion by Solenopsis invicta

*久本峻平, 五箇公一, 坂本佳子(国立環境研究所)
*Shumpei HISAMOTO, Koichi GOKA, Yoshiko SAKAMOTO(NIES)

 2017年以降、ヒアリの日本国内への侵入が断続的に発生しているが、発見事例のほとんどは港湾におけるものであり水際で食い止められている。しかし、近年、東京港、名古屋港、大阪港で女王アリを含む大型コロニーが相次いで発見されたことから、侵入の初期段階での効果的な防除手法の開発は喫緊の課題である。
 通常、侵略的外来アリのコロニーが発見された場合、当該コロニーの徹底的な駆除に加えて発見地点周辺に次世代もしくは前世代のコロニー(近縁コロニー)があるかを調査(周辺調査)する。近縁コロニーが残存していると再度分布が拡大するため周辺調査の重要性は高いが、ヒアリには飛翔分散という特性があり、元の巣から数キロメートル離れた場所に新たなコロニーを創設することがあるため、他の侵略的外来アリの事例よりも周辺調査が必要な範囲が広く、膨大なコストがかかる。ヒアリの侵入が断続的に発生している現在の日本のような状況では、巨大なコロニーが同時多発的に見つかる恐れがあるため、1つのコロニーにかかる周辺調査のコストは可能な限り抑えたい。 そこで我々は、周辺調査の費用対効果を高めるため、適切な調査範囲を推定する手法を開発した。
 この手法では、ヒアリの生態的特性をパラメータとして導入し、ベイズ的アプローチを用いて近縁コロニーがある場所を予測する。この予測に基づいて調査範囲と費用対効果の関係を算出することで、適切な調査範囲を推定する。本手法は、数値解析や仮想空間にとどまらず、航空写真を用いることで現実の地形情報を反映したシミュレーションも可能であるため実用性が高い。


日本生態学会