| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-255  (Poster presentation)

外来アライグマ管理における社会的課題
Human dimensions of invasive alien raccoon management

*池田透(北海道大学), 鈴木嵩彬(岐阜大学)
*Tohru IKEDA(Hokkaido Univ.), Takaaki SUZUKI(Gifu Univ.)

 日本の外来種対策は、局地的分布あるいは侵入初期の監視体制を強化している外来種に対しては防除効果が上げられてきているが、アライグマのような広域分布する外来種では成果は上げられていない。アライグマ防除における課題は、1)アライグマの生態・行動に対する技術・戦略的課題、2)制度・政策上の課題、3)防除体制の構築に関する課題の3つに大別されるが、アライグマは他の中型哺乳類と比較しても比較的捕獲は容易な動物であり、最も深刻で克服が困難な課題は防除体制の構築という社会的課題であると考えられる。
 外来生物法による防除の確認・認定の数こそ多いものの、アライグマ防除の多くが成果のモニタリングも行われずに場当たり的な捕獲に終始しており、外来種防除の体をなしていない。かつ、地域のアライグマ生息状況も不明なまま、達成困難な「根絶」を目標に設定した盲目的な捕獲が実施されており、計画的・順応的防除体制がとられてはいない。
 本発表では、アライグマ防除対策における社会的課題を整理し、その改善手法として、外来種の「根絶」に関する実行可能性研究(Feasibility Study)の導入による無理のない計画立案と具体的な目標設定を行い、かつ効果的・効率的防除計画策定の支援ツールとして防除対策意思決定支援システム(Decision Support System)の導入を提案する。実行可能性研究においては、不可能な目標設定を回避して防除事業の破綻を未然に防ぐとともに、防除対策の説明責任及び社会的合意の形成に寄与すること、意思決定支援システムにおいては、防除対策の効果を「見える化」することが効果的・効率的アライグマ防除対策構築のキーストンとなっている。
(本研究は、(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20204006)により実施した)


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