| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-261 (Poster presentation)
カワヒバリガイLimnoperna fortuneiは中国・朝鮮半島原産の付着性二枚貝で、近年日本各地の河川や湖沼などに分布を拡大し、水路や貯水池などの水利施設で通水障害などの被害を引き起こしている。水利施設における付着性二枚貝の駆除には様々な手法が存在するが、河川や湖沼にそのまま水を流す半開放型の施設が多い農業水利施設では、施設の水を抜き(落水)、貝を物理的に駆除する手法が採用されることが多い。施設を乾燥状態に置くことで付着しているカワヒバリガイを死滅させる手法は、新たな資材を導入する必要もなく、広く採用されている。
水利施設の運用を考えた場合、落水を行う期間は短いほうが望ましい。カワヒバリガイの乾燥耐性については、これまで実験室環境で行われた報告や半野外で行われた研究があるが、野外で付着した状態のカワヒバリガイの乾燥状態での死亡率を直接明らかにした事例は少ない。そこで、カワヒバリガイの繁殖が終了する11月から翌年にかけての期間、茨城県内のカワヒバリガイの発生している農業用貯水池で落水を実施し、付着した状態のカワヒバリガイの乾燥期間と生存率の関係を調べた。乾燥状態のカワヒバリガイの生死判定は、実験室内で曝気した水の中に18時間浸漬し、殻が開口するなどの反応が見られた個体を生存個体として扱った。
調査の結果、付着したカワヒバリガイは時間経過とともに死亡個体が増加し、すべての個体が死滅するのに7-15日を要した。厳冬期、氷点下の状態が継続する条件では短期間で死滅することが示された。これらの結果から、貯水池等に発生したカワヒバリガイを落水によって死滅させるためには、11月以降、2週間以上の落水を実施することが望ましいと考えられた。