| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-262  (Poster presentation)

クビアカツヤカミキリの分布拡大:生態学的知見の対策への反映に向けた取り組み 【B】
Tracking range expansion of red-necked longicorn (Aromia bungii) toward implementing ecological knowledges in the pest control 【B】

*Takashi F HARAGUCHI(RIEAFO, Biodiv), 幸田良介(大阪環農水研・多様性), 石井亘(大阪環農水研・多様性), 相子伸之(大阪環農水研・多様性), 山本優一(大阪環農水研)
*Takashi F HARAGUCHI(RIEAFO, Biodiv), Ryosuke KODA(RIEAFO, Biodiv), Wataru ISHII(RIEAFO, Biodiv), Nobuyuki AIKO(RIEAFO, Biodiv), Yuichi YAMAMOTO(RIEAFO)

 生態系ならびに社会経済へ悪影響をおよぼす危険性の高い外来生物に対する防除計画の立案にあたってのアプローチとして、侵入リスクならびに社会的・経済的な被害の状況に応じてゾーニングをおこなうことが提案されている (Osawa et al. 2019)。ゾーニングは、防除に充てる資源やエフォートの効果的な配分を可能とするのみならず、行政施策として対象生物の未侵入地域におけるモニタリング等の準備を進める役割をも担う実践的手段である。このことから、外来生物に関わる生態学的知見を施策に反映させるうえでの鍵となる情報可視化手法であると位置づけられる。発表者らはこれまで大阪府域における特定外来生物クビアカツヤカミキリ (Aromia bungii; クビアカ) によるサクラへの被害状況を継続的にモニタリングしている。本発表では、集積した知見に基づいて被害地域の拡大と被害木の増加ペースを推定し、府域のゾーニングを試行した結果を報告する。
 2017年から2019年に実施したクビアカ被害状況の調査から、被害の拡大状況を示す基礎的パラメータの推定による被害予測モデルを構築するための解析を行った。本邦の気候条件下においてクビアカは2年1化であると考えられている。また、成虫となって樹幹より脱出する際に、他の樹木穿孔性昆虫とは区別できる特徴的な孔を残す。従って、脱出孔が見られた被害木は調査時点より2年以上前に産卵されていたことを意味する。この知見を利用して、2015年から2019年の被害地域拡大と被害木の増加ペースを求めた。被害地域拡大状況にもとづき前年度の分布範囲からバッファーを発生させ、翌年度被害を生じる確率の高い地域 (警戒地域) および、年当たり被害木割合の増加に基づき被害の急増が予測される地域 (緊急対策地域) を判別した結果を示し、2020年以降の被害調査との比較から地域設定の妥当性を検討する。


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