| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-265  (Poster presentation)

奈良県吉野川に生息するコクチバスMicropterus dolomieuの食性と在来魚への影響 【B】
Feeding habits of Micropterus dolomieu and its effects on native fish species in Yoshino River, Nara Prefecture in japan 【B】

*河内香織, 柏原淳英, 朝倉純平(近畿大学)
*Kaori KOCHI, Atsuhide KASHIHARA, Junpei ASAKURA(Kindai University)

コクチバスMicropterus dolomieuは北米原産のスズキ目サンフィッシュ科の肉食魚で、日本の侵略的外来種ワースト100に指定されている特定外来種である。捕食や競争を通じ、様々な在来生物に直接的または間接的な影響を及ぼす可能性や、オオクチバスMicropterus salmoidesよりも河川上流部で定着する可能性があるとされており、侵入先の在来生物群集への影響が強く懸念されている。近年、奈良県を東西に流れる一級河川吉野川においてもコクチバスの生息が確認された。本研究は、吉野川に生息するコクチバスを採捕し、捕食した餌を直接特定できる利点を持つ消化管内容物の観察とともに、より長期的な餌資源の推定を行える安定同位体比分析を用いてコクチバスの食性を推定し、コクチバスによる本河川の生態系への影響を考察した。奈良県吉野川の五條市大川橋付近において捕獲したコクチバスとその他魚類の消化管内容物を肉眼、または実体顕微鏡を用いて観察し、内容物の同定、および全長の計測を行い記録した。さらにこれらの魚類、水生昆虫類、甲殻類を安定同位体比分析に用いた。出現した内容物のうち、脊椎動物はスッポン1 個体を除いてすべてが魚類であり、魚類の内訳はカワヨシノボリが中心であった。無脊椎動物はコカゲロウ科が半数以上を占め、続けてユスリカ科やカワカゲロウ科が多く出現した。δ15Nの値はコクチバスが最も高く、オオクチバス、在来魚類と続いた。また、体長が100 mm以下のコクチバスのδ15Nの値は在来魚類と近い値をとり、体長150 mm以上の個体は在来魚類よりもおよそ3 ‰高い値をとった。消化管内容物の解析と安定同位体比分析の結果から、標準体長30から100 mmのコクチバスは水生昆虫類や甲殻類、100から200mmでは水生昆虫類、甲殻類、魚類、200 mm以上は魚類を捕食していることが推定された。


日本生態学会