| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-267 (Poster presentation)
沖縄県マングース防除事業における生体探索犬は2011年に導入され、2013年度から本格的に作業に従事している。マングース捕獲には探索犬が正確に臭気を検知し、確実に捕獲に結び付ける(追尾する)精度が求められる。事業実施によりやんばるエリアのマングース低密度化は達成されたが、今後は低密度化したマングースを根絶につなげる必要がある。そのためマングース探索犬による捕獲成功要因を明らかにすることは今後の探索犬活動や新規犬導入のタイミングに有益な情報となるだろう。本調査では、県事業で最初に導入された生体探索犬2頭の初期3か年の捕獲貢献と探索経験の関係について、探索犬作業データから「1頭作業」と「2頭作業」に分類し、それぞれについて各犬の作業量(時間、距離)を算出、マングースの追跡有無と併せて検討した。
「マングース追跡なし」の「2頭作業」では各犬作業量に差は認められなかったが、作業距離、時間に年度効果が、作業回数とはそれぞれ負の相関が認められた。「1頭作業」における作業量は個体で異なり、作業回数と時間に負の相関が認められた。「追跡あり」では作業形態にかかわらず、年度効果は認められなかった。一方、マングース捕獲頭数は年度を追うごとに増加、探索犬がマングース臭気に反応してから捕獲に至るまでに要した追跡距離は成獣オス(407.58 ± 365.23 m)と成獣メス(194.43 ± 129.32 m)で有意に異なった(t=3.12, p<0.01)。
経験は探索ルート周辺のマングース生体臭気有無を判断する精度や早さだけでなく、捕獲に結び付く追跡能力も向上させたと考えられる。また探索犬によって追跡された成獣メス個体の逃走距離が成獣オスよりも有意に短いことが明らかとなった。