| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-338  (Poster presentation)

除草ヤギの野生植物嗜好性 【B】
Wild plant palatability of weed-controlling goats 【B】

*小池文人(横浜国立大学), 池崎真(アルファグリーン)
*Fumito KOIKE(Yokohama National Univ), Makoto IKEZAKI(Alpha green LLC)

里山の生物多様性を維持するためには常緑樹やササ,クズなどを抑制して植生遷移を止める必要があるが,労力不足が課題である.ここでは秋冬にヤギを放牧することで常緑植物等を効率的に除去する実験を行った.除草ヤギは春夏に稼働することが多く冬期の飼育費用がコストとなるため秋冬期のヤギの受け入れ先と除草作業の開発は経営的に重要である.調査は江戸時代から樹林が継続した横浜国立大学のキャンパス外縁の落葉樹林で行った.ヤギはさまざまな種の植物をつまみ食いしてルーメン内の餌組成を多様にして安定的に発酵させるが,広い放牧地で多様な植物を自由に食べられる環境では比較的明瞭な嗜好性の違いが現れる.この研究では10月末から2月までヤギを放牧あるいは遊動つなぎ飼いし,約20m2空間スケールの食痕調査から嗜好性値を求めた.なお落葉植物枯死後の12月以降は窒素が不足するためササと常緑樹葉を1:1で食べると仮定し脱脂大豆フレーク約200gを給餌して餌全体の粗タンパク質を12%程度に保った.得られた嗜好性値はアカメガシワ(9),ヤマグワ(9),イノコズチ(9),クズ(9),クスノキ(8),ムクノキ(8),ヤマノイモ(8),ヘクソカズラ(8),ヤツデ(8),アオキ(7),エビズル(7),タブノキ(6),セイタカアワダチソウ(6),フキ(6),センダングサ(4),トウネズミモチ(3),エノキ(3),ヒサカキ(3),スダジイ(2),チガヤ(1),スイカズラ(1),ヨモギ(1),シラカシ(1),ヤブガラシ(1),シロダモ(1),ススキ(0),アズマネザサ(0),クサギ(-1),ヤブムラサキ(-2),アマチャズル(-2),シュロ(-3),マンリョウ(-4),ガマズミ(-4),モミジイチゴ(-4)であった.秋冬の放牧では伝統的な里山低木の嗜好性が低く,遷移初期や林縁の樹木やツル植物の嗜好性が高い傾向がみられた.


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