| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-342  (Poster presentation)

食料生産量の増加は貧栄養を改善し地域の生態系機能を下げるのか 【B】
Dose increasing of food production improve the stunting and  decrease ecosystem function ? 【B】

*Aki YANAGAWA(Meisei Univ.), Shigeki MORI(Meisei Univ.), Kaoru KAKINUMA(Tohoku Univ., Shanghai Univ.), Subhojit SHAW(Int‘l Inst. for Pop. Sci.)

今後の気候変動に伴う干ばつの頻度の増加が指摘され、飢餓や栄養不足のリスクの増大が懸念されている。一方、干ばつに対する生態系の抵抗性は、気候変動下での安定的かつ持続的な食料供給を実現する上で重要な要因である。
このような背景を受けて、降水量と蒸発散量に基づいた指数であるSPEIや植生指標であるNDVI等を用い、2000年~2015年の干ばつに対する生態系機能(抵抗性)と子供の発育阻害の関係性の評価が行われた。その結果、生態系の抵抗性が低く、子供の発育阻害発症率が高い地域は、インド、パキスタン、アフガニスタンであり、対策が急務であることが推測された。
長期的な栄養失調による発育阻害は、食料不足が原因と考えられる。
食料不足の原因は、現地での食料生産量が不十分である、もしくは食料を生産していても食料を輸出していることが考えられる。
そこで、発育阻害の子供に深く関わりがあると予想される食料生産量と食料の輸出入について、国別に検討した。さらに、発育阻害と生態系機能と食料生産量との関係が明瞭であった、インドについて、州別に栽培品目別の生産量と発育阻害および生態系機能との関係について調べた。
その結果、特に、貧栄養の児童の割合が減少し、生態系機能が向上した地域では、主食であるコメの単位面積当たりの収量増加が確認された。反対に、児童の貧栄養が改善せず、生態系機能が低い地域は、当該地域の主食である小麦の単位面積あたりの収量が低下していた。
以上から、主食の作物の単位面積あたりの収量は貧栄養の児童の割合と関係していることが考えられた。また、作付け面積の増加、もしくは小麦の栽培面積の増加は生態系機能の低下を招く可能性が示唆された。


日本生態学会