| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-343 (Poster presentation)
気候変動の影響や森林管理の政策介入の効果をシナリオ分析で定量的に評価するために、地方自治体スケールでの森林のモニタリングと予測への期待が大きくなっている。基礎自治体の空間スケールでは、利用可能な森林資源情報に応じてモデリングの方法論が選択される。現在は、各都道府県で整備された森林簿・森林GISに記録された樹種・材積・樹齢・地位指数に基づき、収穫予想表を参照して林分別に平均成長量を推計する方法が一般的であるが、近年はリモートセンシングによる森林簿・森林GISの補完や更新が期待されるほか、森林動態を予測するモデルの利用も検討されている。これらの森林資源情報やモデルの選択肢は、それぞれ単純化される情報や過程が異なる。このため、今後の森林モニタリングや長期的な計画立案のためにも、方法論ごとの予測結果の特徴を把握することが必要である。そこで本研究では、入手可能な森林資源情報と予測モデルの組み合わせごとに森林動態を計算し、各方法論の1) 材積 2) 種組成 3) 炭素吸収量へのバイアスを明らかにすることを目的とした。
本研究では滋賀県の森林のうち、森林簿・森林GISが整備されており、林野庁の森林生態系多様性基礎調査の対象となっている129個の林分を対象とした。予測モデルには、現在業務で用いられている滋賀県の収穫予想表と、森林動態を樹種・樹齢で表現されるコホートごとに計算する森林景観モデルのLANDIS-II NECN v6.3を用いた。各林分の森林状態の初期値は、(a) 森林簿の樹種・樹齢を設定した場合、(b) 高木の材積のみ、(c) 高木の材積と生育段階、(d) 高木の材積と生育段階と樹種をリモートセンシング等で取得できた場合を模した4ケースと、3. 全ての森林属性を毎木調査で取得た場合を比較した。森林生態系多様性基礎調査結果の15年分の過去再現実験を行うとともに、100年間の長期シミュレーションを行い、1) 材積 2) 種組成 3) 炭素吸収量への影響を議論した。