| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-344  (Poster presentation)

水生生物の多様性を指標する「さとがわ指数」の開発とその全国マッピング
The Satogawa Index (SGI): an indicator for freshwater biodiversity in Japan

*東川航(土木研究所自然共生C), 末吉正尚(土木研究所自然共生C), 森照貴(土木研究所自然共生C), 米倉竜次(岐阜県水産研究所), 中村圭吾(土木研究所自然共生C)
*Wataru HIGASHIKAWA(ARRC, PWRI), Masanao SUEYOSHI(ARRC, PWRI), Terutaka MORI(ARRC, PWRI), Ryuji YONEKURA(Gifu Pref. Inst. Fish Aqatic.), Keigo NAKAMURA(ARRC, PWRI)

河川、池沼、湿地といった種々の陸水環境が流域のどこにどれだけ存在するのかという空間条件は、水生生物の多様性分布を決定づける主な要因の一つである。近年では、治水対策においても生息場の再生や保全の観点が導入され始めており、水域の空間条件を普遍的に把握するためのツールが必要とされている。さとやま指数(SI)(Kadoya et al. 2011)は、植生図を基に分類した景観の多様度を地図化したものであり、陸生・半陸生動物の種数と正に相関するため、生物多様性の空間分布を評価できる汎用的な指標と捉えられている。一方で、SIは水環境を分類せずに扱うためか、魚類等の種数とは相関せず、水生生物の多様性を評価するには不適と考えられた。そこで本研究では、国内の陸水環境に関する各種の公開GISデータを利用して、濃尾平野とその周辺地域を対象に、水域の空間条件から水生生物の多様性を指標するための「さとがわ指数(SGI)」の開発を試みた。SGIの計算式は、陸水景観の多様度に加えて、水生生物の生息要因として重要な水際長および小河川・水路の密度も反映するよう設計した。対象地域におけるトンボ類および魚類の種数とSGIの関係を検証した結果、SGIは両者の種数と有意な正の相関を示した。本結果より、SGIは水生生物の多様性指標として機能しうると考えられたため、流域環境の保全管理に資する基盤情報の一つとして、これを全国にマッピングした。SGIの応用可能性は、河川生態系ネットワークの保全・再生を見据えた生息場の環境デザインや空間配置だけでなく、他の面的情報レイヤ(植生や土地勾配、貯留・浸透等)との関係を踏まえた多角的な流域管理にも及ぶものと考えられる。


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