| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-346  (Poster presentation)

大河川における河畔林の面積が地表徘徊性甲虫類(オサムシ上科)の群集に及ぼす影響
Effects of riparian forest size on assemblages of ground beetles (Caraboidea) in large river.

*川尻啓太, 東川航, 森照貴, 中村圭吾(土木研究所自然共生C)
*Keita KAWAJIRI, Wataru HIGASHIKAWA, Terutaka MORI, Keigo NAKAMURA(ARRC, PWRI)

大河川の河畔に拡がる陸域(河畔域)では、洪水による攪乱が多様な植生構造を維持してきた。しかし、近年では攪乱の減少等に伴い、中・下流域を中心に河畔林が著しく拡大(樹林化)している。樹林化は増水時に河川の流れを妨げる要因となるため、治水を目的とした河畔林の伐採が各地で進められている。一方で、大河川における河畔林の存在が河畔域の生物相に及ぼす影響については十分に理解されておらず、伐採を進める上で河畔林の持つ生息地としての役割が考慮されていないことが多い。そこで本研究では、河畔域を広く利用する地表徘徊性甲虫類(オサムシ上科)に注目し、その種数に対して河畔林の面積が及ぼす影響を明らかにすることを目的として調査を行った。調査対象は、木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)の中・下流域における河畔域とした。河畔林の有無や面積が異なる計27箇所の調査地で5月下旬から6月上旬の間に、ピットフォールトラップによる定量採集を行った。得られた種を、樹林を主な生息地とする種とそうでない非樹林性の種に区分した。次に、樹林性と非樹林性それぞれの種数に対する河畔林の面積、土壌水分割合、土壌硬度および河床勾配の影響を一般化線形モデル(GLM)によって解析した。調査により、樹林性の13種ならびに非樹林性の58種のオサムシ上科が確認された。解析の結果、樹林性の種数は河畔林の面積に対して有意な正の関係があることが示された。一方で、非樹林性の種数は河畔林の面積との関係はみられず、土壌水分割合との正の関係が示された。本研究は、河畔林の面積が樹林性のオサムシ上科の多様性に影響していることを示しており、生息地としての河畔林の保全を議論する上で有益な知見の一つとなるだろう。


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