| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-348  (Poster presentation)

兵庫県南東部の社叢林におけるゾーニング管理計画の影響と評価
Influence and evaluation of zoning management plan in the Shrine Forest in southeastern Hyogo Prefecture

柏木圭太, 川田直人, 吉岡鷹彦, 岸本弦, *石井弘明(神戸大学農学研究科)
Keita KASHIWAGI, Naoto KAWATA, Takahiko YOSHIOKA, Yuzuru KISHIMOTO, *Hiroaki ISHII(Grad Sch Agric Sci, Kobe Univ.)

社叢林の多くは、長い間人為的介入が少なかったことから生態学・社会学的価値が高いとされている。しかし、近年各地の社叢林で種数の減少や外来種の侵入による多様性の低下が報告されはじめ、加えて樹木の越境による落葉や落枝に対する周辺住民からの苦情も問題となっている。そこで本研究では、社叢林において多様性保全と近隣住民との共存を両立した管理方法を提案することを目的として、兵庫県西宮市にある西宮神社社叢林を対象にゾーニング管理計画を実施し、その効果を評価した。
 本調査地はクスノキが優占する照葉樹林であり、その自然性の高さから県の天然記念物に指定されている。しかし、2005年に外来種シュロの異常繁茂が確認されたため、同年にそれら全てを伐倒除去している。その後、林内に設置した65個の10m×10mコドラートにおいて約5年ごとに毎木調査が実施されている。本研究ではこの調査区を、①植樹を行う多様性促進ゾーン、②住民と共存を目指すバッファーゾーン、③多様性を保護する保全ゾーン、の3区に分け、各区の施業による効果をShannon‐Weinerの多様度指数を用いて評価した。またBray-Curtis指数を用いた非計量多次元尺度法により2005年以後の植生動態を解析した。
 社叢西側の壁から3m以内をバッファーゾーンとすることで、照葉樹林構成種の減少を抑えつつ、林縁に主に分布する外来種を効果的に除去できることがわかった。また、多様性促進ゾーンでは照葉樹林構成種を4種、計12本植栽した結果、バッファーゾーンの設置により減少した多様度指数を補填できた。一方で、社叢の群集構造は2005年のシュロ除去後にレファレンスとした天然生照葉樹林に近づいたものの、2008年以後は再び遠ざり今後もその傾向が続く可能性が示唆された。
 本研究の結果より、西宮神社社叢林におけるゾーニング管理の有効性が示されたが、今後の植生動態を注視しながら継続的に管理する必要であることが示された。


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