| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-351  (Poster presentation)

協働管理運営のあり方
How collaborative management and operation should be.

*廣瀬絢理(東京都立大学)
*Ayari HIROSE(Tokyo Metropolitan Univ.)

  公的な土地の管理において、トップダウン型の形式だけでなくボトムアップ型を取り入れる必要性が主張され、実践されるようになってきた。近年環境省は、協働型管理運営という形でボトムアップ型を取り入れた国立公園管理計画の立案・管理の実践を積極化している。同省が発行している「国立公園における協働型管理運営のための手引書」では、協働型管理運営を推進していく上で協議会の設置を行うことを前提にしている。しかし、実際の国立公園における管理形態の中には、明らかにボトムアップ型、つまり住民意識から始まっていながら協議会の設置を行っていないものがあり、一定の成果を挙げているケースもある。このことは、ボトムアップ型の管理には協議会設置では対応できない形態が存在することを意味する。そこで本研究は、ボトムアップ型の国立公園管理という考え方自体を再検討することを目的とした。まず国立公園においてボトムアップ型と呼ばれている管理体制の実例を、協議会の設置とは無関係に、活動に対する法的根拠の有無から2つのタイプに分類した。続いて、各タイプと国立公園利用者数、訪日外国人利用者数、自然公園等事業費の関係を検討した。結果、ボトムアップ型と呼ばれている管理体制の実例を、法的根拠の有無というシンプルな設定でも、概ね2分できた。さらに法的根拠がある活動は、利用者数が少ない公園で特に推進されている傾向が検出された。これは、人的、金銭的な資源が少ない国立公園の管理を効率化する手段としてボトムアップ型が利用されている可能性を示唆する。ボトムアップ型の管理体制には「協働型管理運営」という形だけではまとめられない様々な形態があり、その推進にはこれらを考慮していく必要がある。


日本生態学会