| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-352 (Poster presentation)
自動撮影(カメラトラップ)は省力的な調査手法として、ほ乳類の密度調査等で実用化されている。里地里山の環境指標となる昆虫の密度調査にも有効であると考えられるが、十分に応用されていない。また、そのような指標生物にはトンボ類等の生活史において水陸両方の生息場所を利用するものも含まれており、主に陸上で有効である自動撮影調査で水中生活時での動態まで把握できるかは不明である。
演者らは2018年から2020年の間、福島県の6地区の水田等において独自に開発した自動撮影装置を用いて秋期の赤トンボ類(アカネ属)を自動撮影した。また同じ水田で畦畔10 m に沿った幅1mのトランセクトにおけるヤゴの羽化殻調査(初夏)と成虫の見取り調査(秋期)を実施した。
秋期における見取り調査による赤トンボ類成虫密度と装置稼働期間あたりの自動撮影枚数には有意な正の相関があることが確認された。また、ノシメトンボはそれ以外の赤トンボ類(主にアキアカネ)と比べて、見取り調査における成虫密度と撮影枚数の関係がやや非線形となる傾向が見られた。また、初夏のヤゴ羽化殻密度と、当年秋期の成虫自動撮影枚数には明確な相関が見られなかった。一方で、ノシメトンボ成虫の秋期自動撮影枚数は翌年のノシメトンボ羽化殻と正の相関が見られるのに対し、それ以外の赤トンボ類成虫の自動撮影枚数と翌年の羽化殻には明確な関係が見られなかった。
これらの結果を踏まえて、本発表では赤トンボ類の相対密度調査手法としての自動撮影の可能性と注意点について論じる。