| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-354 (Poster presentation)
道路やダム等の建設事業に伴う環境アセスメントにおいて、猛禽類の生息状況等を把握する調査が実施されている。しかし、調査で得られるデータは周年の行動の一部であり、調査データの集積が必ずしも十分であるとはいえない。一方で、調査頻度を高めると、調査圧による繁殖阻害やコストの増大をまねく。そこで、本研究では、調査圧が少ない、かつ効率的な調査として、録音した音声から対象種の鳴き声を自動で識別するシステムを用いた調査手法の確立を目指し、「鳴き声識別システム構築における最適な手法の検討」および「鳴き声識別システムを用いた繁殖状況の推定」を行った。
【鳴き声識別システム構築における最適な手法の検討】
近年、録音データからAI技術により鳥類の鳴き声を自動で検出・識別する手法が試行されているが、その詳細な手法は多種多様であり定まっていない。そこで、サシバ(Butastur indicus)を対象に、最適な音声の検出(長時間のデータから効率的な解析を行うための前処理)方法・学習する音声の時間幅・最適な学習モデルについて検討した。その結果、高精度に鳴き声を識別するには、音圧が1~3dB上昇した時点を検出し、2~3sの時間幅で切り出した音声を用い、畳み込みニューラルネットワークにより学習を行うことが最適であることがわかった。
【鳴き声識別システムを用いた繁殖状況の推定】
猛禽類調査では、個体の生息の有無だけでなく、繁殖活動の実施の有無や最終的な繁殖の成否を調べることが重要となる。本システムによる調査でもこれらの繁殖状況を推定することで、調査の汎用性が広がる。そこで、オオタカ(Accipiter gentilis)を対象に、交尾声や幼鳥の鳴き声を識別することで、繁殖状況の推定を試みた。その結果、交尾声や幼鳥の鳴き声を識別でき、繁殖状況の概況が推定できた。
【今後の展望】
クマタカの鳴き声識別システムも開発中であり、その精度や課題を紹介する。