| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-357 (Poster presentation)
伝統的な資源管理や利用の方法は、環境条件や地域文化に適合するようにそれぞれの地域で独自に生み出されてきたと考えられる。太平洋島嶼国であるフィジー共和国にも、こうした伝統的な資源管理や利用が存在する。フィジーの小規模な離島であるガウ島に存在する全16村落を対象に伝統的な植物療法の実態を調査したところ、伝統的な資源管理や利用が色濃く残っており、村ごとに異なる処方箋(どの薬用植物をどの症状に用いるか)を用いていて、多様な利用方法の存在が確認された。ガウ島では、一部の家系のみに伝わる特別な処方箋があり、それらは門外不出である。本研究は、日常的に用いられているその他の処方箋を対象に、各村落に伝わる伝統的な薬用植物の利用実態を調査した。ガウ島の全16村落では、日常的に58種類の薬用植物が27種類の症状に対して利用されており、そのうちの2種類(Botebotekoro (Ageratum conyzoides) と Totodro (Centella asiatica))は全ての地域で利用されている他、数種類の症状に効果があることが分かった。それに対して、58種類中40種類の薬用植物は1村落のみで使用されていた。また、ガウ島内で最も頻繁に処方される症状は、不十分な衛生状態と関連して、腹痛であったが、これに対して7種類の処方箋(薬用植物の利用方法)が確認された。さらに、同じ薬用植物を利用している場合でも、利用する部位(葉・茎・皮等)が異なっていた。これらのことから、各村落が独自に薬用植物の利用方法を発展させてきたことがうかがえる。ガウ島の16村落間の比較により、他地域では用いられない処方箋の発見やこれまで利用されてこなかった薬用植物やその部位を有効活用する手がかりが得られるのではないかと期待される。本発表では、それらの薬用植物や処方箋の違いを16村落間で比較し、化学的に検証された効能等と比較することで、ガウ島の薬用植物の有効性等についても紹介する。