| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-362  (Poster presentation)

森林の生態系サービスを認証する:熱帯木材生産林での広域的な炭素貯留量の評価
Certification of forest ecosystem services: large-scale evaluation of carbon storage in tropical production forests

*澤田佳美(京大・農・森林生態), 藤木庄五郎(株式会社バイオーム), 青柳亮太(京大・白眉センター), 今井伸夫(東京農業大学), 北山兼弘(京大・農・森林生態)
*Yoshimi SAWADA(Kyoto Univ.), Shogoro FUJIKI(Biome Inc.), Ryota AOYAGI(Hakubi Ctr. Kyoto Univ.), Nobuo IMAI(Tokyo Univ. Agric.), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ.)

私たちの生活は森林の様々な生態系サービスによって支えられている。近年、この生態系サービス対して対価を支払い、持続可能な森林管理や森林保全を支援する仕組みが求められてきた。こうした要請を背景に、FSC(森林管理協議会)の森林認証制度では、新たな制度「生態系サービス評価制度」が2018年に開始された。本制度は、既存の森林認証を取得した森林において、5つの生態系サービス(炭素貯留、生物多様性保護、水源涵養、土壌保全、レクリエーション機能)のいずれかをターゲットとして科学的・定量的な評価を行い、それらの維持効果を証明することで、新たな認証が付帯的に発行される仕組みである。本発表では、東カリマンタン・Ratah社の熱帯林で実施された炭素貯留をターゲットとした評価事例について紹介する。Ratah社は2011年から低インパクト伐採を導入し、2013年にFSC森林認証を取得している。炭素貯留の評価は、当研究室で開発した「可視化技術」を用いた。この手法は、現地調査で得たデータとLandsatの衛星画像とを組み合わせて解析するもので、炭素貯留量を地図化するだけでなく、ピクセルに推定値を外挿することで、景観レベルでの定量評価が可能である。2010と2015年の炭素貯留量(ton/ha/year)を比較した結果、炭素貯留量はほとんど減少しなかったことが示され、年間炭素排出量は0.6と、東カリマンタンにおける伐採での炭素排出量(2001–2012年)60.2と比較しても極めて少なかった。この結果を受け、Ratah社の森林管理は、木材生産をしながらも生態系サービスが維持されていると評価され、2018年1月に条件付きの生態系サービス認証を取得した。本制度を通じて、「生態系サービスへの支払い」へのアクセスが可能になることで、より多くの人々が森林管理や保全への支援に参加してくれることが期待される。


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