| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-363 (Poster presentation)
野生生物の研究者たちは、少なからず研究過程で得た様々な生物の写真や動画をデータとして蓄積しているが、そのほとんどは一般に公開されることはない。一方、SNSやYouTube等は社会に広く普及し、それらを通じて発信される野生動物の写真や動画は時に大きな注目を浴びることがある。日の目を見ない大量の写真やデータを適切な形で一般に公開することは、その研究対象や研究活動の理解促進につながるだけでなく、自然環境や野生生物の魅力や保全の重要性を伝えるためにも重要である。本研究は、マレーシアの熱帯雨林を有する国立公園においてビデオカメラトラップで収集した野生動物の映像データから、タイプの異なる2つの動画を作成し、アンケート調査を実施し、動画の好ましさ(好き嫌い、もう一度見たいか、他者への紹介意思)やそれに影響する要因について検討した。動画は同じ動物種を使用して、1)テロップや音楽に工夫を加えたエンターテイメント性を重視した動画と、2)専門家による野生動物の知識や情報の提供を重視したものに編集した。アンケートでは、これらの動画についての好ましさに加えて、性別や動物の好き嫌い、保全への意識等の視聴者の属性によって、選択される動画の好みの違いを調査した。その結果、動物の知識の提供を重視した動画の方が、エンターテイメント性を重視した動画より、好ましいと選択されていたことが明らかになった。しかし、予備調査と本調査の結果で好ましさは大きく異なったことから、回答者の属性や動画で使用する素材や編集の仕方によって、好まれる動画は大きく変化すると考えられた。一方、性別や動物の好き嫌いは動画の好ましさに大きく影響しなかった。ポスターにおいては、これらの結果についてまとめ、研究者が映像や写真データを一般公開する場合の編集や見せ方について議論する。