| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-368  (Poster presentation)

自然史系博物館を活用するために―博物館法改正で生態学コミュニケーションは広がるか
Make the most of the natural history museums - Challenge of new museum law for promoting ecological communications

*佐久間大輔(大阪市立自然史博物館)
*Daisuke SAKUMA(Osaka Mus. Nat. Hist.)

2021年12月、文化審議会より答申「博物館法制度の今後の在り方について」が提出、公表された。順調に進めばこの答申を基礎として2022年の国会に博物館法の改正案が提出されることになる。答申では、自然史博物館や動物園、水族館、植物園などを引き続き社会教育法における社会教育施設として位置づけるとともに、文化芸術基本法によって地域の生涯学習活動から地域課題への取り組み、教育や福祉などとの連携することが期待される施設としている。すなわち、博物館は単なる教育機関から、地域課題に取り組み市民とともに様々な連携を実施していく法的根拠をもつとも言える。
地方分権の進む中、法改正は博物館の社会的位置づけ、行政組織の中での標準を定めるものである。しかし、法だけで制度や予算が変わるわけではなく、今後指針として策定される「望ましい博物館のあり方」などでどのような詳細を書き込むことができるか、予算や補助制度がどのように整備されていくかによって実効性のある取り組みとなるかどうかが決まるだろう。
現在、多くの小規模な博物館やビジターセンターなどは博物館として必要な要件を十分に付与されておらず、資料の保存や地域への教育展開などが十分にできない状況にある。答申は博物館政策がこうした小規模館を含む全体的な底上げも含めた取り組みを国に促すものとなっているが、実際にこれらの各施設を十分に維持することは標本など資料を含め、生物多様性情報のネットワークのためにも人材育成のためにも、また地域づくりのためにも重要な課題となっている。
社会の中で生態学コミュニケーションを担う拠点の一つとして、自然史系博物館に今後何を期待し、どのような可能性があるのか、そしてそのためにはどのような条件付与が必要なのか、議論していきたい。


日本生態学会