| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-369 (Poster presentation)
はじめに
著者はエコツーリズムの空白地帯といえる瀬戸内沿岸地域において、カヌーを用いた都市域の河川におけるエコツアーを考案した。カヌーを用いたエコツアーは、水流や波など自然の変化に対応する感性を育むため、教育効果が高いことが示唆された。しかし、課題も明らかになったため、それらの解決および、新たな解説テーマの検討を行った。
方法
エコツアーは岡山市の旭川下流部(中原橋~京橋)で行った。ツアーでは、カヌーに乗って参加者を先導して川を下りながら、ヤナギ類の生態、淡水二枚貝類や、百間川分流部の構造について解説した。また、予備調査としてツアー実施地周辺の淡水二枚貝相を調査した。
結果
先行研究で課題となった、ツアーの集団が水流に翻弄されて散開してしまう点は、解説者である著者が積極的に先導して誘導することにより、改善することができた。予備調査の結果、トンガリササノハガイやイシガイなどの淡水二枚貝類を確認できたが、水上のカヌーから採取することはバランスを崩す危険があり困難であった。百間川分流部の構造は、対象が巨大なため、カヌーからは全貌を把握しにくく、解説テーマとするには工夫が必要であった。
考察
今回のツアーでは,先行研究で取り上げたヤナギ類の生態などのテーマに加えて,淡水二枚貝類と百間川を新しく加えて解説を行った.淡水二枚貝類をテーマとすることは、さらなる工夫が必要であった。旭川下流部の洪水を緩和する放水路として作られた百間川の分流部は、ツアー参加者にはほとんど知られておらず、新たな河川の一面を紹介することができた。
河川の自然を解説する場合は、河川に生活する野生の生物達だけでなく、人間も含めて「生き物たち」として捉えて、恵みと時に災いをもたらす水の流れとの付き合い方を伝えていくことが重要と考えられる。都市域の河川のエコツアーは防災教育としても活用が期待されると示唆された。