| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-370 (Poster presentation)
綾町は宮崎県中央の南西部に位置する人口約7000人の小さな町であるが、日本最大規模の照葉樹自然林を有する町として知られており、その自然を生かした地域づくりを展開してきた長い歴史がある。2012年には、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)をはかるユネスコ人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画に基づき国際的に認定される地域として、綾町全域を含む一帯がユネスコエコパーク(Biosphere Reserve)に登録された。ユネスコエコパーク登録地域は、①生物多様性の保全、②学術的研究支援、③経済と社会の発展の3つの機能を果たすことが求められており、地元での持続可能な地域づくりを促進させるとともに、世界ネットワークの一員として、国内外での多様な連携や協力活動を行うことが必要となる。また、10年毎に認定後の取組状況を定期報告としてユネスコ本部へ報告する必要があり、綾ユネスコエコパークは2022年にユネスコへの定期報告を提出する時期にきている。地元自治体主導でユネスコエコパーク登録申請から10年の定期報告まで執り行うことは、日本国内では今回が初めての事例となる。
ユネスコエコパーク登録を契機に、綾町では様々な取組が行われてきた。全域を対象にした生物の基礎調査をはじめ、地元住民への生物多様性の意識調査の実施、綾町生物多様性地域戦略の策定、地元小・中学校のユネスコスクール登録および学校との連携した環境教育の実施、近隣の大学との包括連携協定および共同での調査・研究の実施、教育や普及啓発活動の拠点となる綾ユネスコエコパークセンターの開設、民間との連携した新たな里山づくりなど、登録以前にはなかった新たな取組が始まっている。本発表では、綾ユネスコエコパークの登録から10年間で行われてきた取組について紹介する。