| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-373 (Poster presentation)
相利共生(異種個体間の互いに正の相互作用)においては、相手から一方的に利益を受ける個体(裏切り者)を排除し系を維持するメカニズムのひとつとして、自分により利益をもたらす共生相手と優先的に相互作用するパートナー選択が考えられてきた。しかし、近年、理論的研究により、パートナー選択にコストがかかる場合、パートナー選択により共生相手個体群の変異が減少することでパートナー選択の利益が減少していくため、相利共生が安定に維持されないという可能性が示唆されている。今回の研究では、パートナー選択によって維持されている相利共生系の挙動について解明するため、マメ科植物-根粒菌のような栄養相利共生系を念頭に、宿主のパートナー選択の強さと共生者の宿主に対する協力度に連続的な遺伝的変異があると仮定した偏微分方程式モデルをたて、宿主と共生者の間の共進化動態を数値計算により解析した。
解析の結果、宿主のパートナー選択のコストが小さく、共生者の突然変異率が大きくなるほど、平衡状態における宿主のパートナー選択と共生者の協力度の平均値が増加し、相利共生がより促進されるという傾向があった。さらに、パートナー選択のコストが中程度の場合、共生者によらず環境中から宿主が得ることができる栄養物(マメ-根粒菌系の場合の土壌窒素に相当)の量が中程度のときに相利共生が促進されるという結果が得られた。このことから、系外部からの栄養供給は必ずしも相利共生関係を損なうとは限らないということが示唆される。