| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-374  (Poster presentation)

亜高山帯林におけるコケ分解に伴う菌類遷移と基質利用性の評価
Fungal succession associated with moss decomposition stage in subalpine forests

*永田祐大(同志社大学), 松岡俊将(兵庫県立大学), 長谷川元洋(同志社大学), 大園享司(同志社大学)
*Nagata YUDAI(Doushisha University), Shunnsuke MATUOKA(University of Hyogo), Motohiro HASEGAWA(Doushisha University), Takasi OSONO(Doushisha University)

コケは地球上の至る所に存在しバイオマスに大きく貢献しており、また大量の有機態炭素を蓄積し菌類による分解を通して炭素循環に大きく貢献している。そのことからコケに生息する菌類の組成や機能を明らかにすることは陸上生態系を理解するうえで欠かせないことである。また立体的に成長するコケの断面には分解段階に伴う層構造が形成され、過去にはコケの層構造に着目して北極での菌類研究が行われ分解に伴う菌類遷移が確認された(Osono et al. 2012)。さらに、南極での先行研究では分解に伴うコケの化学成分の変化が菌類の出現頻度に影響することが示唆された(Hirose et al. 2017)。これまで極地での研究は行われてきたが、他の気候帯での菌類遷移の様子は未だ明らかとなっていない。また、菌類遷移の要因を理解するには、菌類が基質を利用する能力(基質利用性)について明らかにする必要があると考えた。本研究では、八ヶ岳の亜高山帯林のイワダレゴケ(Hylocomium splendens)を対象に、コケの分解に伴う菌類遷移を明らかにすることを目的とし、菌類遷移と基質利用性との関係を評価した。
コケは分解段階に伴う4つの層に分けられ、菌類の分離には洗浄法を用い、基質利用性の測定には31種類の炭素基質を含むBIOLOG Ecoplateを用いた。分離の結果から、菌類は5つの遷移グループに分けられ、各グループに属する菌類の4つの層間での相対出現頻度を比較したところ、グループⅠでは4つの層間で有意な差は見られず、グループⅡでは2層で、グループⅢでは3層と4層で、グループⅣでは4層で他の層より有意に高い値を示し、菌類遷移の様子が明らかとなった。また、基質利用性から、菌類は2つの機能性グループに分けられた。各グループに属する菌類の4つの層間での相対出現頻度を比較したところ、分解に伴いグループⅠは増加、グループⅡは減少する傾向がみられ、菌類の基質利用性がコケの分解に伴う菌類遷移に影響していることが示唆された。


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