| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-376  (Poster presentation)

ユキツバキの葉の経時的変化における菌類群集の遷移 -菌種間相互作用の検討-
Fungal succession along the senescence and decomposition of Camellia rusticana leaves -Evaluation of interaction between fungal species-

*堀田崇仁(新潟大学), 松倉君予(日本大学), 松尾歩(東北大学), 阿部晴恵(新潟大学)
*Takahito HOTTA(Niigata Univ.), Kimiyo MATSUKURA(Nihon Univ.), Ayumi MATSUO(Tohoku Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

ヤブツバキを含む温帯林の主要な構成樹種葉において、葉の内生菌や分解菌の遷移に関する研究が行われてきた。一方で、ユキツバキなど多雪地域に生育する樹種の葉の菌類相に関する情報は少なく、多雪環境に適応した菌類を含む特徴的な遷移過程を示す可能性がある。発表者はこれまでに、新潟県佐渡島に生育するユキツバキの当年葉から落葉までの菌類相を調査し、5月から11月の生葉及び落葉で優占的に分離される菌類について報告したが(第68回日本生態学会大会発表)、積雪期の菌類相や菌類群集全体の評価は未実施であった。本研究では、新たに2月に当年葉と落葉(9か月間分解)を採取し、積雪期を含めてユキツバキ葉の菌類群集の経時的変化を明らかにすることを目的とした。また、ユキツバキの菌類遷移に菌種間相互作用が及ぼす影響を調査するため、各葉の段階で優占した菌とその前後の段階で優占した菌を用いて対峙培養を行い、コロニーの面積を測定した。コントロールとの面積を比較することで、それぞれの菌の成長阻害率を算出し、菌種間相互作用を評価した。調査の結果、2月に採取した当年葉では11月の採取葉より属数や多様度が増加した。特に、Phyllosticta属など以降の段階で優占する菌の多くが冬季に新規感染しており、多雪地環境への適応が示唆された。同時期に採取した積雪下の落葉ではRhizoctonia属菌が優占的であった。菌類遷移に伴い多様度や属数が増加する傾向であり、どちらも9か月間分解させた落葉が最も高い値となった。対峙培養実験では、落葉で出現した菌類については、後の段階の菌よりも前の段階の菌による成長阻害率が大きくなったため、落葉での菌類遷移に及ぼす影響の一つとして菌種間相互作用が関係していることが示唆された。一方、生葉で出現した菌類では必ずしも出現段階の遅い菌が阻害する傾向ではなかったため、生葉における菌類遷移に菌種間相互作用が及ぼす影響は少ないと推測された。


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