| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-378  (Poster presentation)

環境DNAを用いてのエキノコックスの調査
Detection of Echinococcus multilocularis using environmental DNA

*森健介, 源利文(神戸大学)
*Kensuke MORI, Toshifumi MINAMOTO(Kobe University)

エキノコックス症(Alveolar Echinococcosis; 以降AE)は多包条虫(Echinococcus multilocularis; 以降Em)に感染することにより発症する。AEは致死率が非常に高く、治療には患者に重い負担を強いる病気であるため、世界保健機関はAEを非熱帯地域における最も注目すべき食物媒介病であると指定している。Emは自然に野生動物に寄生し、一度その地域に定着してしまうと撲滅することはほぼ不可能となる。ここ数十年、Emは生息域を広げており過去にAEが報告されていない地域で誰にも知られないままにEmが定着していたということが多くの国で起きている。日本では北海道でのみ生息が知られていたが、ここ数年の調査で本州愛知県知多半島での定着がほぼ確実と見られている。
AEは感染から発症まで5~15年かかると言われ、人の感染が見つかるころにはEmは野生に定着し多くの人間と接触をしていることとなる。そのためAEが報告される前にEmの侵入を感知し対策するためのサーベイランスが求められる。しかしEmの自然宿主である野生動物の調査には労力を要し、またEmの定着している地域でも感染していない個体の方が多いため調査漏れの可能性もあり、生息の有無を確認する手段としては効率的とは言えない。そこで環境DNAを用いてエキノコックスが検出できるか、過去に北海道で採取された環境サンプルを調査した。


日本生態学会