| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-01  (Poster presentation)

リアル「スイミー」 ゼブラフィッシュ!
Real "Swimmy". Zebrafish!

*小池日葵, 荒川翼沙, 堀川咲(新潟県立柏崎高等学校)
*Himari KOIKE, Tsubasa ARAKAWA, Saki HORIKAWA(Kashiwazaki High School)

 ゼブラフィッシュとはコイ目コイ科に属するインド原産の体長5 cmほどの魚で,普段は群れを成して行動している。また,「周りに同種の個体がいなければ他種の群れであっても合流する」という特徴的な性質を持つ。私たちはこれを知ったときに,小学校の国語の教科書に掲載されている絵本「スイミー(レオ=レオニ作)」を連想した。物語の中でスイミーは以下の2つの行動をとる。① 黒色の魚でありながら、赤色の魚の群れに進んで合流した。② 泳ぐのが速かったにもかかわらず、赤い魚と同調して泳いだ。私達は,このようなスイミーの行動が実際の魚類でも起こりうるのかどうか,ゼブラフィッシュを用いて調べたいと考えた。
 ゼブラフィッシュの群れで育ったゼブラフィッシュ(以下,通常個体とする)と,ふ化直後からチェリーバルブの群れで育ったゼブラフィッシュ(以下,スイミー個体とする)について行動解析を行った結果,通常個体はゼブラフィッシュをより好んで接近したのに対し,スイミー個体はチェリーバルブをより好んで接近するようになることがわかった。
 また,スプーン型ルアーで作成した模型を用いた実験の結果,通常個体はゼブラフィッシュ自体には接近するものの,ゼブラフィッシュの平均色に近い色はあまり好まず,スイミー個体はチェリーバルブ自体には接近するものの,チェリーバルブの平均色に近い色に対する接近行動は通常個体よりもむしろ低下することがわかった。よって,ゼブラフィッシュは色だけでなく,その他の要因も含めて総合的に接近する相手を判断している可能性が高いことがわかった。
 さらに,ゼブラフィッシュはチェリーバルブよりも平均遊泳速度が速いが,スイミー個体をチェリーバルブと混泳させた場合,単独遊泳させた場合よりも速度を抑えて泳ぐ可能性も示唆された。本研究により,上記①,②に挙げたスイミーの行動は,実際の魚類でも起こり得るものであるとわかった。


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