| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-02  (Poster presentation)

柏崎市に生息するカサガイに交雑種は存在するのか
Are there natural hybrids of the limpet that live in Kashiwazaki?

*小野湊士, 髙橋蓮(新潟県立柏崎高等学校)
*Minato ONO, Ren TAKAHASHI(Kashiwazaki High School)

 カサガイ類とは潮間帯の岩盤や消波ブロックの表面などに見られる、笠形の貝殻をもつ貝類である。カサガイ類は分布の拡散能力が低く、異なる地域間での遺伝的交流が起こりづらいため、地域ごとに異なる遺伝的集団が形成されやすい。そのため、カサガイ類は分類が難しいとされる。
 本校生物部での人工授精実験において、ベッコウガサの卵とヨメガカサの精子の組合せで受精が起こることを偶然発見したことから、この交雑種が実は自然界にも存在しており、それが上記の分類の難しさの問題をより複雑にしているのではないかと考えた。それを明らかにするため、まずは人工授精で作成した交雑種を成体まで育て、形態観察等を行いたいと考えたが、カサガイ類を受精卵から成体まで育てた例は報告されていない。
 そこで、本研究では人工授精で作成したカサガイの受精卵を成体まで育てる手法を確立しつつ、ベッコウガサとヨメガカサの交雑種の受精卵が成体まで育つかどうかを調べることを1つ目の目標とした。また、貝殻や歯舌の形態比較を詳細に行うことで、柏崎の海岸に生息する個体から交雑種の可能性があるものを絞り込むことを2つ目の目標とした。
 研究の結果、交雑種の受精卵は少なくとも稚貝までは正常に育つことがわかり、その稚貝を着底させるまでの手法確立にも成功した。次に貝殻の形態比較において、2種の間には殻頂の高さや位置、殻幅など、様々な項目で差が見られることがわかった。その結果をもとに、2種のどちらの特徴にも合致しない個体を柏崎の海岸から採取し、交雑種の可能性がある種XとしてDNA解析を行ったが、残念ながらベッコウガサであった。ベッコウガサの種内変異は私達が考えていたよりも幅広いものであったということである。なお、歯舌については、全長以外に2種の間に大きな形態の差は見られなかったことから、同定に用いるにはあまり有効ではないと考えた。


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