| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-03  (Poster presentation)

ヤマトシジミの殻表面の模様の産地による種内変異
Intraspecific variation of the pattern on the shell surface of freshwater clam depending on the place of origin

*三井彩夏, 児玉尚子, 室本勇也, 後藤大道, 佐藤知希, 高田健吾, 竹内智哉, 西野侑吏, 横尾侑眞(県立姫路東高等学校)
*Ayaka MITSUI, Naoko KODAMA, Yuuya MUROMOTO, Hiroto GOTOU, Tomoki SATOU, Kengo TAKATA, Tomoya TAKEUCHI, Yuuri NISHINO, Yuuma YOKOO(Himejihigashi High School)

東京の国立科学博物館を訪問した際、アサリの殻の常設展示があった。その解説から、同種のアサリであっても殻表面の模様に地域差があり、それを種内変異ということを知った。筆者らは、日常的に食べているシジミにも地域による種内変異はあるのか興味をもった。ヤマトシジミは日本固有種で、汽水域に生息する二枚貝である。北海道網走町網走湖、青森県五川原市十三湖、茨城県那珂川下流域、千葉県香取市利根川下流域、島根県出雲市園町宍道湖、愛知県西尾市矢作川下流域、三重県桑名市長良川下流域、徳島県吉野郡吉野町飯貝吉野川下流域、福岡県有明筑後川下流域の9地点から、それぞれヤマトシジミ50個体(表裏の殻でそれぞれ合計100枚)ずつ試料として採取し、殻長、殻の表面積、輪紋の本数、成長線の本数と、黄色の模様部分の面積が貝殻全体の面積に占める割合との関係を調べた。
黄色の模様部分の殻全体の面積に占める割合は、地域ごとに特徴的な値を示す。殻長や殻面積、成長線の本数が異なっても、殻全体の面積に対する黄色の模様部分の割合は地域ごとにほぼ一定の値を示す。生息地の年平均水温、溶存酸素量、塩分濃度との相関関係は見られない。輪紋の本数を数えることは困難である。
縄文海進の頃に水底であった地域に現在生息しているヤマトシジミの黄色の模様部分の殻表面全体に占める割合は0~10%、最大でも0~20%以下であり、当時陸地であった地域に生息しているヤマトシジミの0~30%よりも変動幅が狭い。5000年ごろ、温暖化によって引き起こされた縄文海進による海面上昇によって、日本各地に大きな内湾が形成され、内湾の拡大に伴ってヤマトシジミの生息域が日本各地に広がったとされている。このこととの関連を明らかにするためには、それぞれの地域のヤマトシジミのDNAを測定するなどして比較することが必要である。


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