| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-05  (Poster presentation)

ネビキグサの保全生態学的研究
The conservation biology of Machaerina rubiginosa

*大谷航平, 伊東希美, 渡邊瑞月, 三好響(兵庫県立明石北高校)
*Kohei OTANI, Nozomi ITO, Mizuki WATANABE, Hibiki MIYOSHI(Akashikita senior high school)

ネビキグサの保全生態学的研究

兵庫県立明石北高等学校 生物部
     2年 三好響
     1年 伊東希美、渡邊瑞月、大谷航平

1.動機及び目的
 ネビキグサは、兵庫県版レッドデータブックでBランクに指定されるカヤツリグサ科の種で家島群島の男鹿島、明石市高丘地区のため池や湿地で自生が確認されている。近年、ため池の開発・改修により生育地への影響が指摘されているため、ネビキグサの保全を目的とした繫殖生態学的研究を行った。

2.方法
(1)生育状況調査
 2021年、明石市高丘地区のため池A・B・C・D・E(以下、ため池A・B・C・D・E)、同地区湿地A(以下、湿地A)の6か所で、個体群の生育状況・ 面積の調査を行った。特に、ため池A・Bと湿地Aの3か所では、個体群の生育状況調査を概ね2週間に1回程度定期的に行った。また、同年8月にため池A・Bにて種子を採集し結実率を求めた。
(2)発芽実験
 本実験には、2021年8月にため池Aとため池Bにて採集した種子を使用した。これらの種子に低温湿潤処理・変温(あるいは定温)処理・明暗処理を施して発芽実験を行った。

3.結果と考察
(1)生育状況調査
 ①個体群面積について、2009年の報告と比べると、人によって保全・管理されている池Bでは400m2 から512m2に増加した。しかし、その他の自然条件下に置かれているすべてのため池A・C・D・Eにおいて、2009年と比較して平均約80%の個体群の減少が見られた。個体群減少の原因(光や水位条件)の解明を今後行う予定である。
 ②湿地Aの個体群では花序の形成が見られなかった。また、ため池Aの個体群の結実率は36.1%、ため池Bの個体群の結実率は56.8%であった。
(2)発芽実験
 多くの条件で、種子が発芽しなかった。ただ、ため池Aの種子のうち、低温湿潤処理が30日、30℃(明期12h)/20℃(暗期12h)条件で発芽が認められ、その発芽率が10%であった。このことから、本種の種子の発芽には、低温湿潤処理、変温・明暗周期条件が最低でも必要であることが示唆された。


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