| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-07  (Poster presentation)

極低温下においた後のイシクラゲは光合成できるか?
Can Nostoc commune photosynthesize after extremely low temperature?

*口分田樹菜, 石田優衣, 岡田海大, 上月翔太, 清水奈緒(兵庫県立龍野高等学校)
*Juna KUMODE, Yui ISHIDA, Mihiro OKADA, Syota KOZUKI, Nao SHIMIZU(Tatsuno High School)

イシクラゲ(Nostoc commune)は原核生物のネンジュモ属に属するシアノバクテリアで,乾燥耐性が強く,本校のグラウンドの日陰になる場所にもたくさん生息している。イシクラゲの低温耐性を調べることで,イシクラゲの基本ニッチを知り,その極限環境での利用に活用できるのでないかと考えた。
本研究では,イシクラゲを-80℃まで冷凍できる極低温冷凍庫にイシクラゲ数日保存し,その後室温に戻しても生命活動を再開できるかどうかを調べた。
常温においたイシクラゲ・冷凍したイシクラゲを,それぞれ蒸留水にBTB液・二酸化炭素を吹き込み黄色になった液体中で,太陽光下で培養しBTB 液の色の変化を調べると,気体の発生を確認することができた。BTB液は黄色から透明に変化した。常温においたイシクラゲ・冷凍したイシクラゲを,それぞれ密閉した透明のケースの中で,太陽光をあてて培養した。密封したケースの中には,CO2 メーター,O2 メーターを入れ,その濃度変化を記録したところ,酸素濃度は上昇し,二酸化炭素濃度の変化は下降した。以上より,-80℃で冷凍したイシクラゲは,死ぬことなく休眠し,常温に戻せば気体を発生し,酸素濃度の上昇と二酸化炭素能動の減少からその反応は光合成であることが分かった。
イシクラゲの乾燥耐性・低温耐性を利用すれば,生育の難しい環境,例えば火星をテラフォーミングする際,生産者として活用できるのではないかと考えられる。イシクラゲは低温に置いた後でも光と温度を与えれば光合成を行うことから,少ない物的投資により,初期のテラフォーミングに貢献できる素材にイシクラゲがなりうる可能性が,本研究から示唆された。


日本生態学会