| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-08  (Poster presentation)

高崎山ニホンザル群におけるグルーミング行動の雌雄比較Ⅱ
Comparison of Grooming Behavior between Female and Male Japanese Macaques at Takasakiyama

*工藤愛夏, 岩永航, 岩屋円, 大津華奈, 高野凌(大分舞鶴高等学校)
*Aika KUDOU, Kou IWANAGA, Maru IWAYA, Haruna OTU, Ryo TAKANO(Oitamaizuru High School)

大分市にある高崎山自然動物園には、ヒトによる餌付けの影響を受けた600頭を超えるニホンザルの群れが生息している。高崎山の麓にあるサル寄せ場では、餌撒きを待つニホンザルがグルーミング(毛づくろい)を行っており、以前からオスザルから子ザルへのグルーミング行動が多く観察されていた。オスザルのグルーミング行動に注目した本校科学部の2018年の先行研究では、オスザルから子ザルへのグルーミング行動は餌撒きによって生じたストレスを解消するための異常行動であるとした。しかし、野生群の先行研究においては、非交尾期のグルーミングはほとんどメス間で行われること(安藤、1982)や、未成熟個体とその母ザルの間でよく行われること(宮藤、1986)が明らかになっていた。そこで本研究では、餌付けされた高崎山群におけるオスザルのグルーミング行動の変容を明らかにすべく、屋久島Umi-A群のグルーミング行動を調査するとともに、高崎山B群の約40個体のグルーミング行動を調査し、雌雄のグルーミング行動を比較した。その結果、野生群であるUmi-A群ではメスザルや子ザルはグルーミングを頻繁に行っていたが、オスは非交尾期にはほとんど行っていなかった。一方、高崎山B群では、メスザルや子ザルに対してグルーミングを行うオスザルがいることが分かった。1位~3位の高齢の最上位個体はほとんどグルーミングに関わらず、4~7位の個体はメスザルとよくグルーミングを行い、8位~12位の個体は子ザルによくグルーミングしており、オスザルは群れの中の順位や立場によってグルーミング行動が異なっていることが分かった。これらの結果から、高崎山群のオスザルはヒトによる餌付けの影響を受けた環境で生活することで採餌や群れの防衛にかける時間が少なくなり、グルーミング行動によってメスザルと親和的関係を形成する個体や、子ザルの世話をする個体が現れたと考えた。


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