| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-10  (Poster presentation)

里山のイノシシはいつ・どこで・何をしている?
When,where and what are wild boars living in SATOYAMA doing?

*鈴木伊織, 持留幸太, 千田和也, 古川智菜, 松本成雅, 川島綾華, 高田誠真, 横田真一, 出沢良樹, 伊藤信一(浜松学芸高等学校)
*Iori SUZUKI, Kodai MOCHIDOME, Kazuya CHIDA, Norina FURUKAWA, Seiga MATUMOTO, Ayaka KAWASIMA, Seima TAKATA, Shinichi YOKOTA, Yoshiki DEZAWA, Shinichi ITO(Hamamatsu Gakugei High School)

近年、イノシシの生息域拡大による農作物被害が深刻化している。繫殖力が高いイノシシについては、戦略的な個体数管理が求められるが、管理に必要となる個体数推定の仕組みが脆弱である。野生動物の個体数推定は、主に捕獲にもとづいていたが、近年ではトレイルカメラを用いた捕獲を伴わない個体数推定モデルが提案されている。RESTモデルとは、トレイルカメラの動画撮影機能により、野生動物がカメラ前で滞在した時間を指標とする個体数密度算出法である。捕獲の必要がなく、公園内など野生動物の捕獲が困難な場所でも調査可能である。本研究では、静岡県立浜北森林公園内のイノシシ生息密度をRESTモデルにより算出し、他地域と比較することで妥当性を評価することを目的とした。調査は、2021年5月~7月・8月~9月にかけて県立浜北森林公園において実施した。森林公園内に、100×100mの調査地点を3つ設置し、各調査地点内に5つの撮影ポイントを均等に分布させ設置した。撮影動画をもとに、カメラの画角内に一辺2mの正三角形の撮影範囲を設けた。野生動物が撮影された場合は、撮影範囲内の滞在時間を算出し、RESTモデルを参考として個体数密度を算出した。本研究より、全13種類の哺乳類が観測された。春季における森林公園全体のイノシシ生息密度は5.3個体/km2となった。森林公園内の植生や利用状況をもと分類した結果、イノシシの生息密度は照葉樹林の谷で45.0個体/km2と最大であり,照葉樹林の尾根で7.4個体/km2,アカマツ林の谷で5.5個体/km2,アカマツ林の尾根では1.4個体/km2に過ぎなかった。本研究においてイノシシ幼獣が多数確認できた。今後,森林公園周辺においてイノシシの個体数密度が急増することで,他種の野生動物または森林公園内の植生に影響が生じるだけでなく,さらに人間とのあいだで軋轢が生じるのではないかと懸念される。


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