| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-13 (Poster presentation)
背景と目的
北海道むかわ町の一級河川鵡川には日本固有種のシシャモ(Spirinchus lanceolatus)が遡上する。鵡川ではシシャモの資源量の回復・安定のため1940年代ごろから親魚の捕獲から稚魚の飼育までを行う孵化事業に取り組んでいる。しかしながらシシャモの漁獲量は1960年代に1000トンを越えた後は一時10トン程まで落ち込むなど減少傾向にあり、えりも以西のシシャモはレッドリスト「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されている。
本研究では、シシャモの資源量と前期稚魚期(孵化後1〜3ヶ月)での状態の関係に注目して、前期稚魚の体長や密度が資源量とどれほど相関関係があるのか明らかにすることを目的とした。
生態
シシャモは北海道太平洋沿岸にのみ生息する北海道固有の種である。10月下旬〜12月上旬に特定の河川に遡上して産卵をし、翌年4月上旬〜5月下旬に孵化した仔魚はすぐに降海する。孵化後、1年半を経過し、成熟したシシャモは翌年秋に産卵のため遡上する。産卵後、雄は死ぬが、雌の一部は降海して翌年秋に再度産卵する。
研究と考察
毎年の鵡川でのシシャモ前期稚魚密度とシシャモの遡上数、降海仔魚数、のデータを使用し、それらの相関を分析する。また、北海道胆振東部地震後は記録的不漁が続いていることから、地震による林地崩壊なども鵡川のシシャモの遡上数に影響を及ぼしていると考えられる。今後も、稚魚が育つ河川の環境の変化などについて調べ、シシャモの資源量との関係を調べる必要があると考えられる。