| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-14  (Poster presentation)

校内の山林を用いた炭素収支の測定
Measurement of carbon balance in forest ecosystem

*宋嘉楽, 坂本春樹, 近藤絢斗, 工藤良史, 小山悠太(浅野中学・高等学校)
*Karaku SO, Haruki SAKAMOTO, Ayato KONDO, Ryoshi KUDO, Yuta KOYAMA(Asano Senior High School)

 私たちの学校の校内には、銅像山と呼ばれる山がある。銅像山には様々な生物が生息しており、貴重な森林生態系として機能している。しかし、近年地球温暖化によって様々な生態系が影響を受けているのが現状である。私たちは地球温暖化を緩和し、森林生態系を保全するために森林の炭素固定機能の改善ができないかと考えた。まずは銅像山の炭素収支を明らかにすることを目的とし、炭素固定機能の改善策としてバイオチャー(木材や生物の遺骸を嫌気的条件下で加熱し炭化させたもの)を森林に散布し、炭素収支への影響の検証も行った。
 本研究では15m×15mの区画を2区画設置した。2区画のうち1つには、バイオチャーを10t/haになるように散布を行った。樹木の胸高直径を毎月測定することで樹木の成長量(ΔB)を算出した。また、各区画にリタートラップを設置し、枯死脱落量(LF)を推定し、ΔBとLFの和を年間の炭素固定量とした。一方、土壌呼吸量(SR)を毎月測定し、地温との相関から年間のSRを算出し、炭素放出量とした。よって、炭素固定量と炭素放出量の差から、生態系純生産量を算出した。
 銅像山における炭素固定量は、光合成量が最も多くなる夏期にかけて増加し、胸高直径の増加率は8月が最大となった。また、LFは台風が来た月や落葉期に著しく増加した。一方、SRは地温の高い夏期とバイオチャー散布区で増加した。これはバイオチャーの多孔質な構造に微生物が集まったと考えた。微生物の増加は森林土壌を改良し、樹木の炭素固定機能に正の影響を与えると考えられた。また、バイオチャー散布区では、胸高直径の増加率が高くなる傾向がみられた。
以上の結果より、銅像山における生態系純生産量は+4tC/ha/yearとなり、炭素の吸収源として機能していることが明らかになった。また、バイオチャー散布が植物の成長促進や、微生物の活性促進に関与することが示唆された。


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