| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-21 (Poster presentation)
バイオチャーとは生物由来の有機物を熱分解してつくられる土壌改良資材であり、散布することで土壌のpHや保水性、微生物活性を改善し、植物の生産性を増加させることから、農業への活用も期待されている。しかし、バイオチャーの最適な散布量や粒度をまとめた研究は少なく、根菜を対象としたものはほとんどない。そこで本研究ではバイオチャーの散布量や粒度の違いによるダイコンの成長への影響を明らかにすることを目的とした。
黒土と培養土を3:2の割合で混合した土壌を麻袋に充填し、バイオチャーを0、10、30 t ha-1(C0区、C10区、C30区)散布後、深さ30 cmまで攪拌し、野外に設置した。C10区は粒度の異なる区画(C10中粒区、C10微細区)を準備した。その後1月下旬にダイコンを播種し、発芽の様子を観察した。発芽後は週に4回、成長の指標として草丈と地際直径を計測した。
C0区、C10中粒区、C10微細区では最初の発芽が播種後14日目であったが、C30区では20日目であった。また、播種後30日時点での発芽率はC0区とC10微細区で72%、C10中粒区で78%であったのに対し、C30区では56%と低い値を示した。また成長初期の草丈はC0区が最も高く、C30区が最も低く、C10中粒区とC10微細区の間に差はなかった。地際直径は散布量、粒度ともに差を示さなかった。これらの成長の違いは発芽のタイミングに影響を受けていると考えられる。以上よりバイオチャーを多量に散布すると発芽が抑制され、成長の初期段階ではダイコンの成長が遅れること、バイオチャーの粒度は発芽や成長初期に影響を与えないことが明らかになった。今後成長段階の進行に伴うバイオチャーの影響を明らかにするために草丈と地際直径に加えて葉の大きさ、厚さ、枚数、葉緑素量も測定するとともに、土壌のpHや含有栄養塩量など土壌環境の変化も追究していく必要がある。