| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-24  (Poster presentation)

ヒゴスミレの個体数を増やすコツ
The tips for increasing Viola chaerophylloides var.sieboldiana

*須佐多緒, 古泉菜々海(新潟県立新津高等学校)
*Tao SUSA, Nanami KOIZUMI(NIITSU high school)

 新潟県におけるヒゴスミレ(Viola chaerophylloides var. sieboldiana)は、県で絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されている。県内唯一の生息地である秋葉丘陵でのヒゴスミレの保全を目的として、2016年度から先輩たちが調査を行ってきた。これまでの研究で、発芽率が低く、種子による増殖が難しかったが、草刈りをされても、すぐに新たな葉を展開することから、根伏せ(根を2~5cmに切り分けて植栽)による無性繁殖が可能なのではないかと考え、試すことにした。また、根伏せで使用した個体の地上部の葉も、葉挿しという方法で増殖を試みた。根伏せは7月に行ったものが最も成功し(93.8%)、新芽が出るまで14日と最短期間であった。また、根の部位や長さに関係なく定着した。葉挿しは地上部に根(5mm程度)を残した個体と残さなかった個体では、それぞれ生存率は80%と53.8%となった。
 現地調査を行っていると、杉の葉の堆積により、ヒゴスミレの実生がその間を縫うように生えていたことから、杉の葉がヒゴスミレの照度の確保を遮っていると考え、2021年8月に5~6㎝堆積している杉の葉を除去した。その結果、個体の生存率は、杉の葉がある状態で71%(2017年)、杉の葉がない状態で100%(2021年)、実生の生存率は、杉の葉がある状態で40%(2018年)、杉の葉がない状態で80%(2021年)となった。従って、杉の葉を定期的に取り除くことで、照度が確保でき、実生・個体の生存率が高まることを確認した。
 今後は、遺伝的多様性を考慮して、5mm程度根のついた地上部の葉を数個体、生育地から回収し増殖させた後、移植するとともに、生育地では定期的に杉の葉の除去を行うなど、ヒゴスミレの保全活動を継続させたい。


日本生態学会