| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-26 (Poster presentation)
<研究の背景>近年国際的にマイクロプラスチックが問題になっている。マイクロプラスチックは海洋汚染に繋がるのはもちろん、海洋生物の生態系にも大きな影響を与えてしまうという事が懸念されている。さらに、市場で一般消費者に販売される水産物中にマイクロプラスチックが混入していた場合、食の安全性を問われる事態となる可能性もある。我々はスーパーで販売されているサバについて、消化管の内容物を観察し、マイクロプラスチックの混入の実態について調査した。
<実験方法>サバの産地・体長・体重を調べ、解剖を行った。出てきた内容物をUVライトに当て、赤く反応する固形物を回収した。その後、この固形物を10%KOHに溶かし2週間放置したものを濾過し、濾紙上に残った残渣物を回収した。回収した残渣物の一部は、法政大学生命科学部の協力のもと、FT-IRによる分析を行った。
<結果と考察>内容物から甲殻類の甲羅や小魚のウロコなどを見つけることが出来た。これらは既知のサバの食性と一致している。また、内容物をUVライトで照らしてみたところ、プラスチックと思われる固形物が見つかった。これらの中には粉状に砕け散ったものもあった。発見された粉々になっているものをFT-IRで分析したところ、種類分けを行った結果、ポリプロピレン(以下PP)が検出された。しかしポリエチレン(以下PE)は検出されなかった。牛島ら(2018)によれば、多くの魚種で消化管内容物からPPやPEが検出されたものの、サバと体長が似たスズキにおいてはPPもPEも検出されなかったことから、サイズや食性の違いがこの差となった可能性がある。また、クロロプレンゴムやニトリルゴムなど、ゴム類が複数発見されたことも特徴的である。
<今後の課題>サバ以外の魚種でも実験をして異なる結果が出るのかを調べる、スーパーによる県産表示以外に陸地から近いのか遠いのかなどの違いを細かく分けてより正確な結果を出したい。