| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-29  (Poster presentation)

魚類のエタノール標本作成への挑戦
The Challenge of Creating Ethanol Specimens of Fish

*中村桐人(開智高等学校)
*Kirito NAKAMURA(KAICHI Senior High School)

 魚類をはじめ,動物標本はホルマリンを用いて作製する場合が多い。しかし,ホルマリンには発がん性,入手困難,標本の骨を脆くするという欠点がある。
 そこで本研究では,エタノールを用いた魚類の標本作製法を検討した。一般に,エタノール標本では,標本の脱色,エタノールの揮発,標本の形が保たれにくいといった問題点がある。本研究では,これらの問題点を解決するための標本作製方法を検討するとともに,魚の種類によってエタノール標本に適さないものがあるのかを調査した。
 まず,和歌山県と大阪府で,釣りまたは網を用いて,海水魚12種と淡水魚3種の計15種を採集した。次に,採集した魚のぬめりや汚れを流水で1分間ほど洗浄し,発泡スチロールなどの針を刺すことができる台の上に置き,背鰭,胸鰭,臀鰭の棘の先を尾の方から広げ,針を引っ掛けて鰭を立てた。これに76.9〜81.4%のエタノール水溶液をスポイトで少量滴下し,約8分放置して軽く固定することで,次の操作での標本の変形を防いだ。最後に,魚の個体全体が浸る量のエタノール水溶液で魚を浸した。なお,一度のエタノール水溶液への液浸では,水溶液中に魚の水分が漏出し,エタノール濃度が薄くなり標本が腐る可能性があるため,一度目のエタノール水溶液への液浸から約2日後に,再度保存用のエタノール水溶液に液浸した。このとき,ガラス製の瓶で保存をするのだが,エタノールの揮発を防ぐために蓋をする前に中栓をつけることができる規格瓶を用いた。
 この方法で作製した標本は,約半年間常温で保存した現在,15種中13種は,形状と体色のいずれもが維持されている。一方,イトヒキハゼは,シワが多くなり,形状が変化した。また,コショウダイは,体色が黒色から薄い灰色に目視で8割程度色が薄くなった。この2種におけるエタノール標本作製時に生じた問題の原因究明や他の種の魚でもエタノール標本が作製できるかを検討することが今後の課題である。


日本生態学会