| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-35 (Poster presentation)
昨今、生物多様性の保全が重要とされており、身近な都市公園においてもその多様性の保全が必要とされている。都市公園で植物の観察を行っていると、低木の周りには、その他の場所よりも植物が多いという傾向が観察された。植物が多いということは、植物の草丈や多様度が高いということだと考え、本研究では、低木があることで草丈や多様度が高くなるという仮説を立て、その検証を行った。
本研究は、東京都宿区の戸山公園において、2021年4月から2022年1月まで毎月1回調査を行った。「低木に隣接する南側に置いた1m×1mのコドラート」15個(以下低木有りとする)と、そのコドラートにさらに南側に接するようにした15個の「低木が周りにないコドラート」(以下低木無しとする)の植物種とその被度、その草丈を調査した。
結果、どの期間においても、低木有りの方が低木無しよりも平均の草丈、被度が高く、被度から算出したシンプソン多様度指数が高かった。
人による踏まれやすさの違いによってこの傾向が生まれているのではないかと仮説を立て、低木有りと低木無しのそれぞれのコドラートの土壌硬度について土壌硬度計を用いて調査を行った。結果、低木有りの支持力強度が5.24 kg/cm2、低木無しの支持力強度が7.52 kg/cm2となり、低木無しの方が土壌硬度が高い、つまりよく踏み固められている事がわかった。
結論として、都市公園において低木の近くの草本の草丈、草丈や多様度が高くなり、離れた場所では低くなるのは、低木の近くになる程、人が踏み入りづらくなり、草本が踏まれにくくなるためであると考えられた。そこから、たとえ低木から離れた場所で生態系が失われたとしても、低木の近くの植物が生き残る事でそこから種子が供給され、生態系が戻るというように、低木の近くが草本植物のレフュージュアとなることで多様性を維持している可能性が考えられる。今後はこの可能性について明らかにしていきたい。