| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-38 (Poster presentation)
刺胞動物であるヒドラは細胞や組織レベルの知見が豊富であり、再生や形態形成の研究対象となっている。本校では細胞の観察用に普通ヒドラ(Hydra Vulgaris)を飼育しているが、資料にある飼育適温ではあまり増殖しなかったため、温度や水質に注目して飼育条件を調べることにした。まず、ヒドラ飼育に適したミネラルウォーターを市販の6種(コントレックス,OGEU,クールマイヨール,日田天領水,アルカリイオン水,富士バナジウム天然水)で比較すると、OGEU(Ca²⁺4.9,Mg²⁺1.2,K⁺0.1 単位mg/100mL)で最も増殖した。次に12℃~24℃の5つの温度帯で飼育して個体数を比べたところ、水温が高い(24℃)ほど増殖した。しかし、食べ残しの餌などによる水質悪化も影響するため、21℃が適しているといえる。各成分の最適濃度を調べるためMgSO₄水溶液(0~1.5mM)6種、CaCl₂水溶液(0~2.5mM)6種、KCl水溶液(0~0.2mM)6種の水溶液を用い、21℃で約2週間飼育して個体数を記録した。最も増殖した濃度は2.5mMCaCl₂であり、どのCa²⁺溶液でも増殖傾向が見られた。Mg²⁺溶液とK⁺溶液では減少し、餌を食べず個体が縮み、触手の動きは見られなかった。同じく2価イオンであるZn²⁺水溶液(0~1000μM)5種で観察したが、24h後に溶解したり固定された状態になった。Zn²⁺はMg²⁺やK⁺とは異なる作用があると考えられる。二種成分での最適条件を調べるため、最もヒドラが増殖した2.5mM CaCl₂条件下でMgSO₄水溶液添加(0~1.5mM)6種、KCl水溶液添加(0~0.2mM)6種で約2週間飼育したところMg²⁺0.5mM水溶液添加が比較的増殖した。K⁺溶液添加では顕著な増減はみられなかった。Ca²⁺を添加するとMg²⁺やK⁺単体溶液よりも増殖し、餌を食べる様子が見られた。Ca²⁺はヒドラの触手の構造または運動の維持に必要である可能性がある。Ca²⁺単体溶液に比べCa²⁺溶液Mg²⁺水溶液添加での増殖度はそれ程高くないため、Mg²⁺はCa²⁺の働きを抑制した可能性がある。