| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-40  (Poster presentation)

タンポポの種子の特徴からみた在来種と外来種の繁殖戦略の違い
Differences in reproductive strategies of native and exotic dandelion species based on seed characteristics

*宮田愛彩, 示野安那, 南優太, 宮元凛(石川県立七尾高等学校)
*Aisa MIYATA, Anna SHIMENO, Yuta MINAMI, Rin MIYAMOTO(Nanao high school)

タンポポの種子は綿毛を持ち,風で散布される。種子の散布方法は,植物の繁殖戦略と強く関係することが知られている。タンポポの種子散布について,種子の形質,特にその重さと散布の関係に着目し,実験を行い,繁殖戦略について考察した。実験では,石川県鳳珠郡能登町から採集した在来種のエゾタンポポ(以降「エゾ」)と,石川県珠洲市,七尾市,羽咋市から採集した外来種のセイヨウタンポポ(以降「セイヨウ」)を用いた。
 エゾとセイヨウそれぞれについて,種子の重さ,頭花あたりの種子数,室内で風で飛ばした時の飛距離,高さ1.2 mから落下させた時の滞空時間を調べた。また,エゾとセイヨウそれぞれの野外での分布について,両種が生育する石川県教育センターで過去に調査された分布地図のデータをもとに,分布パターン(Iδ指数)と分布の重なり(分布重なり合い指数C’δ)について解析した。
その結果,頭花あたりの種子数に違いはなかったが,種子の重さは,エゾの方がセイヨウより有意に重かった。また,種子の重さと飛距離,滞空時間との関係をみると,どちらも重い種子ほど短いという負の相関がみられた。また分布はどちらも集中分布であったが,エゾの方がその傾向が強く,セイヨウはエゾよりは広く分布していた。また,二種間の分布の重なりは非常に小さかった。
 これらの結果から,エゾはあまり遠くまで飛ばない重い種子を,セイヨウは遠くまで飛ぶ軽い種子をつけるといえる。先行研究によると,エゾは肥えた土壌を,セイヨウはやせた土壌を好むことが分かっている。これらのことから,エゾはある程度生育を約束された場所で個体数を増やす「安全戦略」を,セイヨウは軽い種子を遠くに飛ばして繁殖域を広げる「チャレンジ戦略」をとっていると考えられた。


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