| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-43  (Poster presentation)

魚類相の変遷とその要因についての一考察
Transition of fish fauna in Ishi river and a consideration about that factors

*Shohei UMEGAWA, Kyoka MATSUO(Tondabayashi High School)

 近年,各地の河川で環境保全が活発になっている中,私たちにとって身近な河川である石川には環境,魚類相に多様性があるとは感じられなかった。そこで,1960年~現在の石川の環境,魚類相の変遷を追い,人間が河川環境と魚類の多様性に与えた影響を明らかにすることを目的に研究を行った。
 主な調査内容は,①河川の蛇行や分流(形態),河川周辺の土地利用の変化,②魚類相の変化で,航空写真や現地調査,文献を用いて調査した。
 ①の結果から,上流域では1960年~現在まで蛇行や分流,田畑の割合に大きな変化はなかったが,下流域では1960~1990年に河川形態と土地利用に大きな変化があった。しかし,1990年~現在では,下流域においても大きな変化は見られなかった。
 ②の結果から,現在の魚類相は,上流域,下流域ともにそれぞれ1種が大半を占めていた。特に下流域での種の偏りが顕著であった。種数の変遷は,上流域は大きな変化はないが下流域は年を経るごとに大きく減少していた。確認されなくなった種は中下流域,流れの緩やかな場所に生息するといった特徴が共通していた。
 ①②をまとめると,1960~1990年の間で,下流域での急激な宅地の増加によって河川が直線化され流速が上昇したり,水質が悪化したため種数が減少したと考えられる。しかし,1990年~現在では,河川形態などが大きく変化していないにも関わらず,種数が減少し,1種が大半を占めていたことから,①での項目以外にも魚類相に影響を及ぼす要因があると考えた。
 そこで,新たな要因を調べるために文献調査を行い,瀬や淵のある場所では生物多様性に富んでいるという萱場の報告から,新たに瀬や淵に着目した現地調査を行った。その結果,瀬,淵に加え水際植生,大礫のある地点では種数が多く,種の割合に偏りが少ないのに対し,それらが無い地点では種数が少なく割合も偏っていることが分かった。


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