| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-44 (Poster presentation)
イワナ属 Salvelinus は北半球の寒冷地の河川に広く分布しており、日本はその生息域の南限に位置する。日本国内では主に北日本に分布しており、西日本では山地に分布し、南限は奈良県十津川水系である。これまでイワナの生息情報がなかった大阪府において、2020年5月、金剛山地を流れる石川水系上流域でイワナの稚魚を採集した。これはイワナの繁殖の可能性を示唆しており、石川水系上流域でのイワナの繁殖生態や生活史を明らかにすることを主な目的として研究を行った。石川水系上流域の延長流程約4kmの4地点で2020年5月17日~2021年8月11日に10回のイワナの採集を行った。稚魚はたも網・さで網を用いて、成魚は釣りによって捕獲した。採集した個体はホルマリン固定して持ち帰り、全長・体長・体重を測定した後、解剖して胃内容物重量や生殖腺重量を計測した。生殖腺重量指数GSIは、11月10・15日をピークに1月25日にかけて減少したことから、この間に産卵が行われたものと推察された。2020年は5月17日に、2021年は4月25日に稚魚の出現を確認し、その後1年で100㎜前後に成長した。これらのことから、石川水系上流域でイワナが繁殖していると考えられる。イワナの稚魚は上流の3地点で確認したが、最下流の1地点では確認できなかったことから、生息範囲は最上流域の延長流程約3km程度と考えられる。なお、イワナの稚魚が確認できなかった最下流の1地点のみ、8月の正午前後の水温が20℃を超えていた。今後は、生息域全域を明らかにして、採集した標本についてDNA解析をする予定である。