| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-48  (Poster presentation)

大阪府内の河川で採集されたウグイの正体
The Identity of PSEUDASPIUS HAKONENSIS collected in a river in Osaka Prefecture

*中島歩(開智高等学校)
*Ayumu NAKASHIMA(KAICHI Senior High School)

 ウグイ(Pseudaspius hakonesis)はコイ目コイ科に属する魚類であり,「一生を淡水域で過ごす淡水型」と「淡水域で生まれてから海水域にくだり,産卵のために再び淡水域に戻る降海型」が存在する。北海道から九州にかけて分布するが,大阪府では,淀川水系や大和川水系から少数の個体の採集のみが報告されており,大阪府レッドリスト2014では「情報不足」に指定されている。特に,大阪府泉州地域の河川では2018年に1個体のみが採集された報告にとどまっている。
 そこで本研究では,2021年7~12月に,泉州地域におけるウグイの分布を調査した。さらに,捕獲個体が在来個体か移入個体(人為的に移入させられた個体)かを判別した。
 ウグイの分布域については,泉州地域の7水系(大津川,近木川,佐野川,樫井川,男里川,茶屋川、東川)において,21節1000目の投網をそれぞれ 20回ずつ行うことで調査した。また,捕獲したウグイが在来個体か移入個体かを判別するにあたっては,大阪市立自然史博物館に遺伝子解析を依頼した。
 結果,これまでウグイの分布の報告がない貝塚市近木川と阪南市男里川の2河川で,それぞれ2個体ずつウグイを採集した。採集したウグイの体長はいずれも約10~14cmであった。また,大阪市立自然史博物館に依頼した遺伝子解析によると,2018年に採集された個体も併せて,いずれの個体も東日本の個体群に含まれる移入個体であることが判明した。泉州地域に東日本の個体群に含まれるウグイが移入した経緯については,釣り餌として販売されている個体が移入個体となった可能性が考えられる。これは,海水耐性のあるウグイが,海釣りの生き餌として泉州地域の釣具店で販売されており,問い合わせた5つの販売店でいずれも東日本の個体群に含まれるウグイを仕入れ,販売しているためである。これらの移入個体が定着,繁殖している可能性や移入個体が,生態系に与える影響についての調査が今後の課題である。


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